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あれ?原点に立ち返って考えてみると…風営法の厳しい規制って、我々の権利を侵害してる??
風営法ってどんな法律?でも触れたように、風俗営業というビジネスをするにあたって、「規制の網の目」から逃れることはできません。そしてこの「規制」の具体的中身は「風営法」によって定められています。
「この場所でやってはいけない」「この広さでなければダメ」「こんなに暗い照明はアウト」…など、姑のように実に細かく口出しをしており、正直言ってウンザリ、という方も多いのではないでしょうか。
多くの方は「風営法という法律」で規制されているんだから仕方ないよね…ということであきらめモードなのですが、中には「ちょっと待てよ…確か日本国民である以上、憲法というもので営業の自由というものが保障されていなかったっけ?…とするならば、風営法の規制は俺の営業の自由を侵害するものなんじゃないの?」と感じる鋭い方もいらっしゃいます。
そこでここでは風営法ってどんな法律?の内容をもう少しだけ掘り下げ、「そもそもの問題として…風営法の規制って認められるものなの?」という点について、ちょっとだけ考えてみることにしましょう。
日本国憲法には営業の自由を保障するという直接的な明文は存在しません。ではその根拠をどこに求めることができるのでしょうか。
現在のところ、日本国憲法第22条第1項の「職業選択の自由」にその根拠を求めるとするのが通説です。「職業選択の自由」を保障するためには当然「営業の自由」も保障されているよね…そうでなければ職業選択の自由の意味がないじゃないか…ということです。
(参考)
日本国憲法第22条第1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
「職業選択の自由」が憲法上認められる権利であることから、「営業の自由」すなわち風俗営業を営むという権利も認められるとして、では、それは何の制約を受けることもない絶対的な権利なのでしょうか。風営法では風俗営業者に対して様々な規制をかけていますが、これらは風俗営業者の権利を侵害するもの、すなわち憲法に反するものなのでしょうか。
風俗営業の規制と風営法の関係を考える際は、憲法第22条第1項の「公共の福祉に反しない限り」という点に着目することが大事です。実は憲法で認められている権利だとしても、その行使には制限がかかる場合があるのです。
精神的自由権と呼ばれる権利、例えば「表現の自由」などは、厳しい基準で違憲かどうかが判断されるのですが、風俗営業を営むなどのいわゆる「経済的自由権」については、精神的自由権と比べて比較的緩やかな基準で違憲かどうかが判断されることになります。条文にもあるように「公共の福祉」に反する場合は、権利行使に制限がかかることもやむなし、とされているのです。
そして風俗営業については、それ自体悪いものではないけれども、ややもすると売春や賭博へとつながるおそれのある営業ということで、社会秩序の維持や公共の福祉といった観点から、風営法によってこれを規制することに問題はない、とするのが現在の通説となっています。
このことから、風俗営業に対して様々な規制をかけている風営法は憲法に反するものではなく、「風営法の規制ってそもそも認められるものなの?」という冒頭の疑問については、「認められる」とするのが妥当、ということになります。
参考までに、この点に関する裁判所の判断をざっと見てみましょう。なお、「取締法」とあるのは現在の風営法のことだと思って下さい。現在の風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、もともと「風俗営業取締法」という法律だったのです。
■東京地方裁判所昭和25年7月19日
「…憲法第22条第1項は公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を保障しているが…取締法第1条に列挙せる風俗営業は客を接待して遊興又は飲食をさせ…る営業であってそれ自体では何等公共の福祉に反するものではないけれども、その性質上ややもすれば売淫、賭博等の所謂風俗犯罪を誘起する危険がありこの種の営業を何らの制限を加えることなく何人にも場所的、時間的、数的又はその態様において自由に営ましめるに於ては社会秩序を維持し、公共の福祉を増進せんとする国家目的に反すること明白であるから、公共の福祉のため此種営業につき国民の職業選択の自由を制限して、之を公安委員会の許可にかからしめた取締法は憲法第22条第1項に違背せるものではない…」
じゃあ、「職業選択の自由についてはいいとしても、憲法第14条に定める<平等権>に反しているんじゃないの?だって他の業種にはこんなに強い規制はかかっていないのに、風俗営業にだけこんなに多くの規制をかけるなんて…平等じゃないよね…」という意見も出てくるかと思います。しかし、これについても憲法に反するものではない、と裁判所は判断しています。
(参考)
日本国憲法第14条第1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
■東京地方裁判所昭和25年7月19日
「…平等権自体にも自ら制限が内在し合理的なる差別までも禁止するものではないと見るべきであって、この理は社会的身分と云い得べき職業についても異ならない、従て特定の職業に従事する者に対し業務上特別の注意義務を課するという如きも合理的である限り当然許されるべきである。よって本件につき之を見るに前段説示の如く風俗営業はその運営如何により社会秩序、公共の福祉を害する虞があるのであるから之を防止する為該営業に従事する者に対し善良の風俗を害する行為を特に防止するべき義務を特に負担せしめるが如きは正に合理的な差別として憲法第14条第1項に抵触するものとは云い難く、従って取締法及び之に基く都条例に於て右義務を規定していることは何ら違憲ではない…」
■名古屋高等裁判所昭和52年10月20日
「…本件規制は、前叙の弊害を除去し、公共の福祉を保持するためにモーテル営業者が等しく受任しなければならない責務であり、右規制が平等負担の原則に反しているものとはいえない…」
ちなみに風営法37条には、警察職員が風営法の施行に必要な限度において営業所や待機所に立ち入ることができる旨の規定があります。これは「国民の自由」を尊重した憲法13条に反するのではないか、という考えも成り立ちそうですが、これについても、やはり反することはない、と裁判所は判断しています。なお、立入りについて、かつての取締法は第6条でこれを規定していました。
(参考)
日本国憲法第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
■東京地方裁判所昭和25年7月19日
「…取締法第6条が当該官吏及び吏員に取締法又は之に基く都条例の実施につき必要ある時に、単にその身分を証明する証票を携帯するのみを以て立入ることを認めたのは風俗営業の営業所に限るのであって、右に営業所とは本来その性質上不特定多数の出入すべき場所であるから、この点に於て通常の住民と異るばかりでなく、取締法の認める立入権は善良の風俗維持乃至それに害ある行為の防止という警察行政上の必要に出ずるものであるから、之を以て住居の不可侵を認めた憲法の精神に悖るものともなすことを得ない…之を以て国民の自由尊重を保障した憲法第13条の規定に違反するものとなすを得ぬこと勿論である…」
「憲法が保障する権利」と「風俗営業に対する風営法の規制」…この点については、まだまだ論じ足りないのですが、風営法に関する「ざっくりとした理解」の一助になれば幸いです。
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【執筆者】富岡 勉(とみおか つとむ)
1974年東京生まれ。
■慶應義塾大学を卒業した後、大学院で行政法(行政裁量)を研究。2001年行政書士試験合格。
■現在、東京都行政書士会所属行政書士、富岡行政法務事務所所長。専門は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律と、同法をめぐる裁量問題。理論と実務の両方に詳しい。
■行政書士・富岡勉からのメッセージ
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