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<風営法第8条>をちょっとだけ掘り下げてみましょう…中級編の内容です
入門編の内容から一歩踏み込んだ話も聞きたい、というご要望がありましたので、ここでは中級編のネタとして、公安委員会が行ったパチンコ店の風俗営業許可取消処分を取り上げ、風営法第8条で定める「許可の取消し」について、公安委員会に裁量があるのか、ないのかを考えてみたいと思います。
入門編よりレベルがワンランクアップした内容となっておりますので、興味のある方のみご覧いただければ、と思います。ご要望があれば、更に踏み込んだお話(上級編)も、また別の機会にしたいと思います。
なお、風営法に関する基礎知識がない方は、「やさしく読んでざっくり理解!風俗営業許可「超」入門!」を先に読まれることをおススメします。
また、このページで扱う風俗営業許可の取消処分に関連する情報としては、以下のコンテンツも参考になるかと思いますので、関心のある方はどうぞ。
■どんな場合に風営法違反となるのか(許可が取り消されるのか)
■風営法違反となった場合、どういう流れで処分を受けることになるのか
風営法第8条は「許可の取消し」について定めていますが、この取消しについて、公安委員会に裁量が「ある場合」と「ない場合」とで明暗が分かれる場合があります。
例えばある事案について許可を取り消すかどうかを検討する時に、公安委員会に裁量が「ある」となると、諸般の事情を総合的に検討する余地が出てきます。処分を受ける営業者にとっては、公安委員会の裁量の下、諸般の事情を総合的に検討してもらったほうがいい場合と、逆にそうでない場合の二通りがあるので、処分権者の裁量の有無は非常に重要なキーとなります。
また、裁量の有無はその後、訴訟になった場合にも影響を与えます(この点についてご興味のある方は、行政事件訴訟法第30条をご参照下さい)。
ですので、実務の場面で風営法第8条を読む際は、こうしたことにまで神経を使って読み込んでいく必要があるのです。
では、この許可取消しと裁量の関係について、現在はどのような考え方が採られているのでしょうか。現在のところ、風営法第8条の取消しについては、「裁量的取消規定説」が有力なものとなっています。つまり公安委員会には許可の取消しについて裁量がある、ということです。これは入門編ではなく中級編のネタですので、余裕のある方は以下の内容を興味深くお読みいただけるかと思います。
同一市内でパチンコ店を2店経営していた法人が、ロム改造を理由に風営法第26条第1項の規定に基づき風俗営業許可を取り消されました。これはロム改造によって当該法人が風営法第4条第1項第5号の欠格事由に該当する事になったことから、風営法第8条第2号の適用となり、許可が取消しとなったものです。
この時、被処分者がパチンコ店を2店舗経営する法人であったことから、不正を行った店舗のみならず、別のもう一店についても許可取消しとなりました。被処分者はパチンコ店の開店には数億円かかることから、許可の取消しによる店舗の閉鎖は莫大な損失となること、また、処分店舗の従業員の失業等の事情もあるため、一店の取消しをもって、もう一店の取消しも行うのは裁量権の濫用にあたる、として争ったのです。
前提の問題として、そもそも公安委員会に裁量があるのかないのか、が問題となりました。もし裁量があるとすれば、その濫用を理由に、行政事件訴訟法第30条の規定により、風俗営業許可取消処分の取消請求が可能となるからです。
なお、公安委員会側は、本件処分には裁量の余地がなく、一店目を取り消せば、もう一店についても義務的に取り消さなければならない、と主張しました。
この風営法第8条の「許可の取消し」については、これまで必要的取消規定説と裁量的取消規定説の二つが主張されてきましたが、本件において第二審の東京高等裁判所は、裁量的取消規定説の立場を取りました。
裁判所はまず、風俗営業許可取消しの法的性格は、講学上の「撤回」であるとしました(一般的に使われる「取消」という言葉と、講学上でいうところの「取消」とを混同しないように注意して下さい。両者は全く異なるものです。風俗営業の許可取消しは、講学上、「取消」ではなく、「撤回」にあたります。なお、ここは中級編ですので、この点についての説明は省略します)。その上で、許可取消しという行為の性質、法の文言、質屋営業法との類似性・整合性等に着目した分析を行っており、大変興味深い内容となっています。
まず、許可取消しという行為の性質につき、東京高裁は、「一般的に、法26条により一営業所についての許可取消しがされる場合でも、それぞれの違反事由ごとに営業者の悪性の程度、同一の違反が他の営業所においても繰り返されることの危険性は異なる場合があり得るし、許可後の取消し(撤回)の場合には、当初の許可の是非の判断と異なり、当初の許可を前提として新たな法律秩序が次々と形成されているから、違反行為の性質、態様などに伴う取消し(撤回)の必要性、取消し(撤回)による相手方への影響の程度も比較衡量の上、取消し(撤回)の是非を判断するのが相当であると解される」と判示しています。
被処分者が主張するように、パチンコ店の開店には相当の費用がかかるのが通常ですので、許可の取消しとなれば、その権利侵害の度合いは非常に大きいものがあります。そのため、裁判所はこうした許可取消しの権利侵害的な部分に着目し、被処分者が被る不利益について個別具体的に考える必要がある、と判断しているのです。つまり<裁量無し=義務的判断>をするのではなく、個別事情を考慮しながら判断せよ、と公安委員会に裁量の余地を与えているのです。
また、裁判所は風営法第8条の文言にも着目しています。風営法第8条は取り消すことが「できる」となっていることから、「法8条各号のうち、特に3,4号の取消原因…については、公安委員会の適切な裁量による取消権の行使が期待されていると考えられ…法8条の他の号についても、同条の『取り消すことができる』との規定ぶりは公安委員会の権限を示すのみでなくその裁量の余地を示した規定とみることが相当である」としています。
公安委員会には裁量の余地があるということを、法の文言という形式的側面からも検討しているのです。
さらに裁判所は他法との類似性・整合性にも着目しています。
この点については、質屋営業法を例にとり、「質屋営業法25条2項は、『二以上の営業所を有する質屋が、一の営業所につき、前項の規定により質屋の許可を取り消され、又は質屋営業の停止を命じられた場合においては、他の営業所についても、その所在地を管轄する公安委員会は、情状により、その質屋の許可を取り消し、又はその質屋営業の停止を命ずることができる…』旨規定しているところ…風営法の場合にもこれと同様営業所ごとの許可制が採用されており、一の営業所において法26条の許可取消しがされた場合の他の営業所の許可の是非については、質屋営業法の場合と同様に…公安委員会の適切な裁量による取消し(撤回)の運用による立法目的の達成が期待されているとみても不合理とはいえない」と判示しています。
このように、許可の取消しという行為の性質(重大性)、法の文言という形式的側面、更には他法との類似性・整合性といった点等を総合的に考慮した上で、風営法第8条における公安委員会の許可取消しには裁量の余地がある、と裁判所は判断しているのです。
繰り返しますが、風営法を扱う実務家にとって、「許可の取消し」という場面で、処分権者に裁量の余地があるのか、無いのかを考えることは非常に重要な事です。それによって取るべき手立てが変わってくるからです。
以上、ここでは中級編のネタとして、風営法第8条の「許可の取消し」について、必要的取消規定説と裁量的取消規定説の二つの考え方があること、そして裁判所は後者の裁量的取消規定説の立場を取ったこと、についてざっくりとご紹介しました。さらに詳しくお知りになりたい方は、行政法を学ばれることをおススメします。
風営法という法律は非常に奥が深く、風俗営業の許可申請を扱う行政書士であっても、それを本当に理解している方は極めて少ない…という印象を持っています。何気なく読み飛ばしてしまう風営法第8条にも、実は様々な背景があるのです。
中級編のネタ、と言いましたが、ここでのご紹介は表面に軽く触れただけの非常にざっくりとしたものです。奥が深過ぎて、全てを書くことができないくらいで、しかもそれは風営法の条文すべてにおいて言えることなのです。
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そして、そのためには風営法を深く理解している行政書士でないと、その期待に応えることはできないと思います。最近、他の事務所からのリカバリー案件が急増しており、こうしたことを特に強く感じます。
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【執筆者】富岡 勉(とみおか つとむ)
1974年東京生まれ。
■慶應義塾大学を卒業した後、大学院で行政法(行政裁量)を研究。2001年行政書士試験合格。
■現在、東京都行政書士会所属行政書士、富岡行政法務事務所所長。専門は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律と、同法をめぐる裁量問題。理論と実務の両方に詳しい。
■行政書士・富岡勉からのメッセージ
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